12月号「相続時精算課税制度」
2023.12.01
今年も残すところあと1か月になりました。暦年贈与を今年中にしたいと検討されている方もいらっしゃると思います。贈与には、暦年贈与と、相続税と贈与税の一体化措置として相続時精算課税制度がありますが、今回の相続ニュースでは「相続時精算課税制度」の概要や活用方法、留意点について改めてご紹介したいと思います。
相続時精算課税の制度とは、原則として60歳以上の父母または祖父母などから、18歳以上の子または孫などに対し、財産を贈与した場合において選択できる贈与税の制度です。この制度を選択する場合には、贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日の間に一定の書類を添付した贈与税の申告書を提出する必要があります。
なお、この制度を選択すると、その選択に係る贈与者(「特定贈与者」といいます。)から贈与を受ける財産については、その選択をした年分以降すべてこの制度が適用され、「暦年課税」へ変更することはできません。
また、特定贈与者である父母または祖父母などが亡くなった時の相続税の計算上、相続財産の価額にこの制度を適用した贈与財産の価額(贈与時の時価)を加算して相続税額を計算します。【国税庁ホームページ抜粋No.4103 相続時精算課税の選択】
相続時精算課税制度は、受贈者が贈与者ごとに選択することができます。そして、前述のとおり、一旦この制度を選択すると、生前贈与について、贈与時に贈与財産に対する贈与税(特別控除額2,500万円を超える額に対して一律20%)を支払い、その後の贈与者の相続時にその贈与財産と相続財産とを合計した価額をもとに計算した相続税額から、すでに支払った贈与税額を控除することにより贈与税、相続税を通じて納税することになります。
留意点としては、主に次の2点です。まず、一旦選択すると暦年贈与へ変更することができず、①継続適用が条件である点に注意が必要です。また、相続時に相続財産に加算される贈与財産は、贈与時の時価で合算されるため、贈与後の贈与財産の時価の上昇または下落によって相続時の相続税で、②贈与財産の価格変動による得失がある点にも注意が必要です。したがって、②に関しては、今後価格が上昇する見込みがある財産をこの制度を利用して財産を移転すると良いとされています。
2023年度税制改正(弊社相続ニュース2023年2月号参照)にて、相続時精算課税制度が見直される点について再度ご紹介いたします。
贈与税の計算については、
{贈与税の課税価格-基礎控除額110万円-特別控除額2,500万円(累積)}×20%
となり、特別控除とは別に毎年110万円の基礎控除を受けることができるようになります。
相続税の計算については、すべての相続時精算課税適用贈与財産を相続財産に合算して相続税を計算します。また、相続財産と合算する贈与財産の価額は、贈与時の価額(相続税評価額)によります。ただし、土地や建物が災害により一定以上の被害を受けた場合には、その贈与における価額から災害によって被害を受けた部分に相当する額を控除した残額とされます。この改正は来年2024年1月1日以後の贈与から適用され、災害による被害を受ける場合についても同様です。
相続時精算課税制度を利用してみたいとお考えの方は、税理士にご相談ください。
ワンストップ相続のルーツ
代表 伊積 研二