7月号「円満で幸せな相続に必要なこと」
2023.07.01
円満で幸せな相続を迎えるためには、どのような準備をすれば良いでしょうか。
まず、被相続人となられる方が、「お元気なうちに」相続について検討することが必要です。先月号でもお伝えしたように、万一のことが起こった際に一番困るのは、残された相続人ではないでしょうか。
「具体的に、何歳から準備すれば良いでしょうか」というご質問をいただくことがありますが、私共は「思い立ったが吉日です。準備は早い方が安心です。」とお伝えしております。なぜなら、その方がいつ万一のときを迎えるのか、病気や認知症などで判断能力が減退するのかが分からないからです。
遺されたご家族を一番悩ませることは、遺産をどのように分割するかという遺産分割協議の場面で多く起こります。遺産分割の内容次第では、これまで家族関係が良好だった方でもトラブルになるからです。また、今般の民法改正(令和5年4月1日施行)にて、遺産分割協議において特別受益と寄与分の主張をする場合の期限を設け、「相続開始の時から10年」と規定されました(改正民法904条の3)。特別受益と寄与分は、いずれも相続人間の公平を図る制度ですが、相続開始の時から10年を経過するとこれらの主張ができなくなるので注意が必要です。10年あるので大丈夫、とお考えの方もいらっしゃると思いますが、相続人間で遺産分割協議がまとまらず、遺産分割の調停・審判になった場合、遺産分割で家族関係がこじれてしまい、合意形成も難しくなります。さらに、遺産分割協議中に、相続人に相続が発生し、当事者関係が複雑化する場合はますます合意形成が難しくなり、長期化する可能性が高まります。
では、このような困った事態を防ぐためには、どうすれば良いでしょうか。やはり、被相続人にあたる方が、ご自分で大切な財産を誰にどのように遺すかについて、お元気なうちから取り掛かり、準備しておくことが大切です。
「うちは相続財産といっても自宅と預貯金だけだから大丈夫」「兄弟の仲は良いから大丈夫」という方も多く見受けられますが、特に相続財産に占める自宅の財産価値の割合が高く預貯金が少ない場合には、相続人間の財産のバランスをとるのが大変なので注意が必要です。また、不動産を共有で分ける場合にはその後の処分等の合意形成が難しくなるので原則としてお勧めできません。分け方次第ではいわゆる「争族(そうぞく)」に発展しうるので、バランスをとるなどの工夫も必要です。
さらに、財産をどのように分けるかを検討される際には、相続税の問題や納税資金対策の問題も併せて検討されることをお勧めいたします。
なお、ご自分の大切な財産を誰にどのように遺すかについては、やはり遺言書の作成が有効です。また、自筆証書遺言は民法の方式に従って作成する必要がありますので、注意が必要です。当センターでは、遺言は公正証書遺言をお勧めしております。 何をどのようにすれば“円満で幸せな相続”を迎えられるかというヒントについては、ぜひ当センターまで気軽ご相談ください。相談は無料です。
ワンストップ相続のルーツ
代表 伊積 研二