8月号「空き家の発生を抑制するための特例措置について」
2022.08.01
空き家の発生を抑制するために、被相続人の居住の用に供していた空き家(以下、「家屋」)を相続した相続人が、耐震リフォーム(耐震性のある場合は不要)又は家屋を取り壊した後、その家又は敷地を譲渡した場合には、一定の条件の下、その譲渡所得から3,000万円を特別控除することができます(空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除)。
これまでは、相続開始の直前まで、被相続人が家屋に居住していた場合のみが適用対象でしたが、2019(平成31)年4月1日以降の譲渡について、要介護認定等を受け、被相続人が相続開始の直前に老人ホーム等に入所していた場合も、一定要件を満たせば適用対象になります。なお、例えば、老人ホーム等の施設ではなく、介護のため子の家に移り、そこで亡くなった場合は、この特例を受けることができません。
本特例を適用した場合の譲渡所得の計算は次のとおりです。
譲渡所得=譲渡価額-取得費(取得費が不明の場合は譲渡価額の5%で計算)-譲渡費用(除去費用等)-特別控除3,000万円
被相続人が20年間所有していた取得費不明の家屋(昭和55年建築)を相続し、取り壊して(除去費用200万円)、取り壊し後の土地を500万円で譲渡した場合の計算について、具体的にみてみましょう。
本特例の適用がない場合は、
譲渡所得=500万円-500万円×5%-200万円=275万円
所得税・復興特別所得税・住民税額は、275万円×20.315%=558,662円、税額は558,600円となります。
本特例の適用がある場合は、
譲渡所得=500万円-500万円×5%-200万円-3,000万円=0円
よって、所得税・復興特別所得税・住民税額は0円となります。
(【国土交通省ホームページ】「空き家の発生を抑制するための特例措置」(空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除)についての制度の概要より抜粋)。
この特例措置を受けるに当たっては、次の条件が必要です。
①相続日から起算して3年を経過する日の属する12月31日までの譲渡であること。
②2016年4月1日から2023年12月31日までの譲渡であること。
③相続開始の直前において、当該被相続人以外に居住をしていた者がいないこと。
④昭和56年5月31日以前に建築された家屋(区分所有建築物を除く)であること。
⑤相続の時から譲渡の時まで空き家であること(相続の時から譲渡の時まで、事業の用、貸付けの用または居住の用に供されていなかったこと。)
⑥譲渡価額が1億円以下であること。
⑦家屋を譲渡する場合(その敷地の用に供されている土地等も併せて譲渡する場合も含む)、当該譲渡時において、当該家屋が現行の耐震基準に適合するものであること。
この特例を受けるためには、空き家所在地の市町村にて「被相続人居住用等確認書」の交付を受けたうえで、税務署にて確定申告を行う必要があります。
詳しい適用要件や可否、確定申告時の提出書類等については、税理士やお住まいお近くの管轄税務署にお問い合わせください。
ワンストップ相続のルーツ
代表 伊積 研二