7月号「介護と寄与分・特別寄与料」
2022.07.01
亡くなられて相続が発生すると、遺言が作成されていない限り、相続人の間で遺産分割協議を行うことになります。この遺産分割協議の多くが、相続人同士で揉め、家族関係が悪化するきっかけになってしまうこともあります。揉める原因としては、日頃から疎遠であるなどもともと家族関係が悪いこと、生前に被相続人から多くの支援を受けた相続人がいること(特別受益)、不動産など分けづらい財産が多いこと、相続財産のうち金融資産が占める割合が少ないことなどが挙げられますが、寄与分の話し合いがうまくいかないことも挙げられます。
今回の相続ニュースでは、寄与分及び特別寄与料についての話題をご紹介します。
寄与分とは、被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をした相続人に対して、「寄与分」として反映させ、相続の際に他の相続人よりその分多く相続をさせる制度です。
また、令和元年7月1日施行の民法改正により、「特別寄与料」制度が導入され、相続人以外の親族(6親等内の血族、3親等内の姻族)が被相続人の財産の維持や増加について特別の寄与をした場合、その親族が相続人に対して寄与に応じた金銭の請求ができるようになりました(改正民法第1050条第1項)。したがって、相続人以外の親族(例えば、お世話をしてきた長男のお嫁さんなど)が自ら寄与分を主張することも可能です。
しかし、この寄与分や特別寄与料が認められるためには高いハードルがあります。主張するに当たっては、証拠の確保が必要です。具体的に主張されたいと思われる方は弁護士に依頼・相談することをお勧めします。
さらに、寄与分及び特別寄与料を主張する場合は、家庭裁判所に申立てが必要です。寄与分については、「相続開始から10年間」の期間制限があります。特別寄与料については、申立てができる期間が「特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から6か月」及び「相続開始の時から1年」以内という短い期間制限(改正民法第1050条第2項ただし書)になりますので、ご注意ください。
では、他に「寄与分」や「特別寄与料」という考え方を反映させて、介護をしてくれた人に感謝の気持ちとして残しておく方法はないでしょうか。その方法としては、遺言書の作成があります。
遺言書では、ご自分の財産をどのように相続させるのか、お世話になった人への感謝の気持ちを込めて作成することができます。しかも、ご自分が納得されるまで何度も書き直すことができるのがポイントです。遺言書では、貢献してくれた人に感謝の気持ちとともに、財産の宛先をご自分で決めておくことができます。こうしておけば、亡くなられた後、ご家族が遺産分割協議で寄与分をめぐり揉めるというリスクが回避・軽減できます。
なお、当センターでは、作成及び内容の確実性から、公正証書遺言をお勧めいたします。
何から始めたら良いのか、相続や遺言について検討されたいと思われる方は、ご相談ください。ご相談は無料です。
ワンストップ相続のルーツ
代表 伊積 研二