11月号「自筆証書遺言の保管制度②」
2020.11.02
7月号でも相続ニュースでお伝えしました、2020年7月10日にスタートした法務局による「自筆証書遺言の保管制度」について、再度お伝えします。
1.保管の対象となる自筆証書遺言
民法の定める要件を満たしていること(財産目録を除き本人が自筆で作成していること、作成日付を正確に記載すること、押印することなど)は勿論ですが、次の要件を満たしていることが必要です。
・無封であること
・各ページにページ番号を記載してあること
・用紙の片面に記載すること
・数枚にわたる場合であっても、とじ合わせないこと
・用紙は、文字が明瞭に判読できる日本産業規格A列四番の紙であること
・余白があること(用紙を縦置きにした場合、上が5mm以上、左が20mm以上、右が5mm以上、下が10mm以上であること)
なお、様式に間違いがなければ、令和2年7月10日以前に作成された自筆証書遺言であっても、保管の対象となります。
2.遺言書情報証明書の交付
自筆証書遺言の保管制度を利用した場合、相続が開始した際に通知制度があるのが大きなメリットの1つと言えます。ただし、この通知は、関係者が遺言書の閲覧等をしなければ、遺言者が死亡したからといって自動で送付されるものではありません。
遺言者の死後に、関係相続人等は「遺言書情報証明書」の交付請求を窓口または郵送ですることができます(窓口の場合、原則として要予約。証明書1通につき1400円の収入印紙)。
この交付請求がなされると、遺言書保管官は、他の相続人等に対して遺言書が保管されている旨の通知をします。「遺言書情報証明書」は、家庭裁判所による検認手続きを経ることなく、相続手続きに使用することが出来ます。
なお、今後「死亡時の通知」が設けられる予定です。これは、遺言書の保管申請時に死亡時通知の申出をし、通知対象者を指定することで、遺言者が死亡したときに法務局から通知がされるようになるので更に便利になる予定です。
このように、自筆証書遺言の保管制度は便利ですが、遺言書の全文を自分で作成する必要があること、本人が法務局に出向く必要があり代理人では不可であること、遺言書の内容については審査されないことや、保管手続きが出来る法務局が決まっていることなどの注意点もあります。しかし、やはり最大の注意点は、遺言書の内容ではないでしょうか。せっかく保管制度を利用して大事に保管された自筆証書遺言であったとしても、相続人が困るような内容であっては問題だと思います。
円満な相続のヒントについては、ぜひ専門家や当センターまでご相談ください。相談は無料です。
ワンストップ相続のルーツ
代表 伊積 研二