3月号 「配偶者居住権等に係る譲渡所得の取扱い」
2020.03.02
前回2月号の相続ニュースでは、今年4月1日以降の相続から適用される「配偶者の居住の権利」の内容についてご紹介しました。
そこで、今回は、配偶者居住権等に係る譲渡所得の取扱いについて簡潔にご紹介します。
◆配偶者居住権とは?
配偶者居住権とは、被相続人の配偶者(以下単に「配偶者」といいます。)が、被相続人の財産に属した建物に相続開始時に居住していた場合、その居住建物の全部について原則として配偶者が無償で居住収益できるとする法定の権利をいいます(民法1028条1項、1030条)。
この配偶者居住権の新設により、配偶者が安心して住み慣れた家で居住できるようになりました。しかも、配偶者居住権は、基本的には所有権よりも評価額が低く評価されるため、最終的には預貯金などの財産もより多く相続できるようになります。
要件については、2月号の相続ニュースを参照ください。
このように、配偶者居住権は、配偶者の終の棲家の確保、配偶者の保護を目的として創設された権利ですので、原則として配偶者の終身の間存続します。 しかし、現実には、遺された配偶者が老人ホームなどに入所することになり、被相続人が遺した建物を譲渡するケースも想定されます。 その場合配偶者居住権等に係る譲渡所得の取扱いは以下のとおりです。
◆配偶者居住権の所有者が配偶者居住権等の消滅によって取得した場合
配偶者居住権(配偶者居住権または配偶者敷地利用権)が合意による解除や放棄により消滅し、これにより配偶者が対価を取得した場合には、譲渡所得として課税対象になります。また、その際の取得費については、居住建物等の取得費に配偶者居住権等割合を乗じた金額から、配偶者居住権等設定から消滅等までの期間に係る減価の額を控除した金額となります。
◆配偶者居住権等の消滅前に居住建物等を譲渡して取得した場合
相続により居住建物等を取得した相続人が、配偶者居住権等の消滅前にその居住建物等を譲渡した場合は、その対価が譲渡所得の対象となります。その際の取得費は、居住建物等の取得費から配偶者居住権または配偶者敷地利用権の取得費を控除した金額となります。
配偶者居住権の制度も上手に活用して、必要に応じて売却する際の取扱いも踏まえて、円満で満足のいく“幸せな相続”を迎えて頂きたいと思います。
ワンストップ相続のルーツ
代表 伊積 研二