相続ニュース

このコーナーでは、相続に関する情報をお届けします(毎月1日更新)

11月号「遺す側・遺される側の備え」

2022.11.01ニュース

相続が開始すると、亡くなられた方(被相続人)の相続財産を調査し、プラスの財産とマイナスの財産がどれくらいあるかを把握する必要があります。したがって、日頃から財産がどこにあるか、ご家族がすぐにわかるようにしておくことが大切です。

最近では、インターネットの利用率やスマートフォン普及率も高まり、パソコンやスマートフォン上でデータのやり取りをすることが増えてきました。これからの相続に関しては「デジタル遺品」についても確認しておく必要があります。「デジタル遺品」とは、一般的に、遺品となったパソコンやスマートフォンなどのデジタル機器に保存されたデータ、インターネット上の情報記録など、被相続人が遺したあらゆるデータ情報をいいます。

特に、インターネットで取引する銀行口座の預貯金や証券口座の株式、投資信託及び外貨、さらに電子マネー、ビットコインなどの暗号資産を保有されている方も多いと思います。最近増えてきているサブスクリプションサービスなどの契約なども挙げられます。また、故人が運営していたブログ、ホームページ、電子メールの情報、写真データやSNSなど、あらゆる情報が含まれてきます。

これらのデータ情報といっても、財産的な価値を有するものと、財産的な価値を有しないものとあります。

相続人であるご家族は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継するので、財産的な価値を有するものについては、原則として相続が可能です。ただし、デジタル遺品の内容から被相続人の一身に属したものと評価される場合には相続することができません。具体的には、各サービスの利用規約等を確認し、個別に判断する必要があります。

ところで、そもそもご家族が被相続人のデジタル機器であるパソコンやスマートフォンにアクセスできなければ、デジタル遺品の存在にすら気付かず、IDやパスワードについての手がかりがなければ迅速にアクセスできず相続手続きが困難になります。

デジタル遺産を遺す側は、「デジタル遺品」でご家族にこのような負担をかけないためにも、日頃から情報をまとめて保存しておき、もしものときは確認できるようにしておく必要があると思います。ご家族側は、日頃からデジタル遺品についての話題や、デジタル遺品になりうるデータや情報について話しておくことで、万が一の際に備えることが出来るのではないでしょうか。

デジタル遺品に限らず、日頃から財産状況を把握しておく、もしものときにご家族に分かるように書面やデータを残し、その場所を伝えておくというひと手間が、ご家族の安心につながると思います。

何をどのようにしたら良いか、何から手を付けたらよいか分からないと悩まれている方は、お気軽に当センターまでご相談くさだい。ご相談は無料です。

ワンストップ相続のルーツ

代表 伊積 研二

10月号「相続財産の清算人」

2022.10.03ニュース

亡くなられた方に相続人が1人もいない場合や、相続人がいるかどうかわからない場合、相続人全員が相続放棄をする場合に、亡くなられた方の財産上の権利義務を承継する相続財産法人(民法951条)が成立します。

現行法では、家庭裁判所から選任された相続財産の管理人が相続財産法人を管理・清算してきましたが、職務内容に照らして、このたび「相続財産の清算人」に名称が変更されることになりました(改正民法952条第1項、令和3年4月21日成立の「民法等の一部を改正する法律」(令和5年4月1日施行予定))。

現行法では、相続人のあることが明らかでない場合における相続財産の清算手続きは、①相続財産管理人の選任の公告、②相続債権者等に対する請求の申出をすべき旨の公告、③相続人捜索の公告の後、④権利関係を確定し、⑤相続財産管理人が相続財産を清算するという流れで、①から②までの間が2か月、②から③までの間が2か月以上、③から④までの間が6か月以上と、権利確定までに少なくとも10か月かかる手続きでした。①から③の公告手続きを同時にすることができなかったので、このように長期にわたっていました。

そこで、改正法では、①相続財産管理人の選任の公告と併せて③相続人捜索の公告をすることができ、②相続債権者等に対する請求の申出をすべき旨の公告(2か月以上)、④権利関係の確定、⑤相続財産の清算という手続きができることになりました。①・③を一つの公告で同時に行うことができるとともに、併せて②の公告もできるようになったので、④の権利関係確定までに最短で6か月に短縮することが可能になります。

なお、このような手続きを経ることがないよう、相続人となる方がいらっしゃらない場合など、ご自分が亡くなった後の手続きの煩雑さを考慮して、予め遺言書や寄附等、様々な準備をされておくことをお勧めいたします

お子さんがいらっしゃらない方も、相続人が配偶者と実父母、または配偶者と兄弟姉妹(実父母が亡くなられている場合)となるので、配偶者のためにも遺言書をご準備されておくことをお勧めいたします

何をどのようにしたら良いか、何から手を付けたらよいか分からないと悩まれている方は、お気軽に当センターまでご相談ください。ご相談は無料です。

ワンストップ相続のルーツ

代表 伊積 研二

9月号「相続不動産登記の義務化等」

2022.09.01ニュース

相続は開始したけれども遺産分割が未完了、もしくは、遺産分割や登記手続きにお金がかかるので価値のない土地をそのまま放置している方もいらっしゃるのではないでしょうか。遺産分割をせずに放置していると、相続人がその土地を共有している状態になり、代を経るにつれて相続人数が増えてしまい、相続登記をするための時間的・費用的・精神的な負担も増えるので大変です。それだけではなく、いわゆる所有者不明土地となり、土地の利活用が阻害され、土地管理・利用のために必要な合意を取り付けることが困難になるなど、公共事業にも影響を及ぼしています。

そこで、所有者不明土地問題の解消のための一連の法律が成立し、2021(令和3年)4月28日に公布されました。登記制度を改正し、相続不動産登記が義務化されることになりました。本制度は、2024(令和6)年4月1日から施行されます。

内容は、相続の発生を登記に反映させるため、不動産を取得した相続人(相続または遺贈により不動産を取得した相続人)に対し、相続の開始と所有権の取得を知った日から3年以内に、土地・建物の相続登記を申請することが義務付けられます。正当な理由なく申請しない場合には、10万円以下の過料の対象になります。なお、売買や贈与により取得した人や相続人以外の受贈者には、この登記は義務付けられません。

この制度については、すでに2024(令和6)年4月1日より前に相続が開始している場合には経過措置があり、「相続の開始を知り、かつ所有権を取得した日から3年を経過した日」と、「2027(令和9)年3月31日」のいずれか遅い方の日が登記申請期限になります。

では、相続の開始と所有権の取得を知った日から3年以内に分割協議が整わない場合はどのような方法を経る必要があるでしょうか。この場合は、相続税納付の場合と同様に、とりあえず法定相続分どおりの相続登記という方法があり、相続人の範囲の確定や法定相続分の割合を確定させます。このときには、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等の収集が必要です。しかし、数代にわたって相続登記がなされていない場合には、相続人の確定自体が難儀で、負担も増えます。そこで、相続人の負担を軽減する相続人申告登記制度が設けられ、相続不動産登記の義務化とともに、2024(令和6)年4月1日から施行されます。

相続人が「登記名義人の相続が発生したこと」及び「自らが登記名義人の相続人であることを登記官に申し出ること」により、申告義務を果たしたものとみなされます。この申告時点では、相続人の範囲を確定する必要がなく、相続人に関する書類は、申出をする相続人自身が被相続人(所有権登記名義人)の相続人であることがわかる戸籍謄本で十分とされ、この手続きに関する登録免許税はかかりません。これを「相続人申告登記」といい、3年以内に行えば過料は免れます。

ただし、その後分割協議が調って、不動産を取得した者が、分割協議後3年以内に登記申請を行わなければなりません。

このように、相続登記の義務化がなされます。まず、ご家族やご自身が所有されている不動産の名義を確認し、家族のうち誰に引き継いでもらいたいのか、売却して換価分割をするのかなどを検討しておくことが大切です。特に、共有の土地の場合は、話し合うべき相続人の人数が多い場合があるので注意が必要です。

相続登記の煩雑さの1つに遺産分割協議が挙げられます。遺言書できちんと指定されていれば遺産分割協議を経る必要がありません。遺言書で誰にどの土地・建物を相続させると指定してあれば相続する側が楽だったのに、と思うケースは多々あります。相続不動産登記の義務化を期に、遺言書の作成を検討されてはいかがかと思います。

ワンストップ相続のルーツ

代表 伊積 研二

8月号「空き家の発生を抑制するための特例措置について」

2022.08.01ニュース

空き家の発生を抑制するために、被相続人の居住の用に供していた空き家(以下、「家屋」)を相続した相続人が、耐震リフォーム(耐震性のある場合は不要)又は家屋を取り壊した後、その家又は敷地を譲渡した場合には、一定の条件の下、その譲渡所得から3,000万円を特別控除することができます(空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除)。

これまでは、相続開始の直前まで、被相続人が家屋に居住していた場合のみが適用対象でしたが、2019(平成31)年4月1日以降の譲渡について、要介護認定等を受け、被相続人が相続開始の直前に老人ホーム等に入所していた場合も、一定要件を満たせば適用対象になります。なお、例えば、老人ホーム等の施設ではなく、介護のため子の家に移り、そこで亡くなった場合は、この特例を受けることができません。

本特例を適用した場合の譲渡所得の計算は次のとおりです。

譲渡所得=譲渡価額-取得費(取得費が不明の場合は譲渡価額の5%で計算)-譲渡費用(除去費用等)-特別控除3,000万円

被相続人が20年間所有していた取得費不明の家屋(昭和55年建築)を相続し、取り壊して(除去費用200万円)、取り壊し後の土地を500万円で譲渡した場合の計算について、具体的にみてみましょう。

本特例の適用がない場合は、

譲渡所得=500万円-500万円×5%-200万円=275万円

所得税・復興特別所得税・住民税額は、275万円×20.315%=558,662円、税額は558,600円となります。

本特例の適用がある場合は、

譲渡所得=500万円-500万円×5%-200万円-3,000万円=0円

よって、所得税・復興特別所得税・住民税額は0円となります。

(【国土交通省ホームページ】「空き家の発生を抑制するための特例措置」(空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除)についての制度の概要より抜粋)。

この特例措置を受けるに当たっては、次の条件が必要です。

①相続日から起算して3年を経過する日の属する12月31日までの譲渡であること。

②2016年4月1日から2023年12月31日までの譲渡であること。

③相続開始の直前において、当該被相続人以外に居住をしていた者がいないこと。

④昭和56年5月31日以前に建築された家屋(区分所有建築物を除く)であること。

⑤相続の時から譲渡の時まで空き家であること(相続の時から譲渡の時まで、事業の用、貸付けの用または居住の用に供されていなかったこと。)

⑥譲渡価額が1億円以下であること。

⑦家屋を譲渡する場合(その敷地の用に供されている土地等も併せて譲渡する場合も含む)、当該譲渡時において、当該家屋が現行の耐震基準に適合するものであること。

この特例を受けるためには、空き家所在地の市町村にて「被相続人居住用等確認書」の交付を受けたうえで、税務署にて確定申告を行う必要があります。

詳しい適用要件や可否、確定申告時の提出書類等については、税理士やお住まいお近くの管轄税務署にお問い合わせください。

ワンストップ相続のルーツ

代表 伊積 研二

7月号「介護と寄与分・特別寄与料」

2022.07.01ニュース

亡くなられて相続が発生すると、遺言が作成されていない限り、相続人の間で遺産分割協議を行うことになります。この遺産分割協議の多くが、相続人同士で揉め、家族関係が悪化するきっかけになってしまうこともあります。揉める原因としては、日頃から疎遠であるなどもともと家族関係が悪いこと、生前に被相続人から多くの支援を受けた相続人がいること(特別受益)、不動産など分けづらい財産が多いこと、相続財産のうち金融資産が占める割合が少ないことなどが挙げられますが、寄与分の話し合いがうまくいかないことも挙げられます。

今回の相続ニュースでは、寄与分及び特別寄与料についての話題をご紹介します。

寄与分とは、被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をした相続人に対して、「寄与分」として反映させ、相続の際に他の相続人よりその分多く相続をさせる制度です。

また、令和元年7月1日施行の民法改正により、「特別寄与料」制度が導入され、相続人以外の親族(6親等内の血族、3親等内の姻族)が被相続人の財産の維持や増加について特別の寄与をした場合、その親族が相続人に対して寄与に応じた金銭の請求ができるようになりました(改正民法第1050条第1項)。したがって、相続人以外の親族(例えば、お世話をしてきた長男のお嫁さんなど)が自ら寄与分を主張することも可能です。

しかし、この寄与分や特別寄与料が認められるためには高いハードルがあります。主張するに当たっては、証拠の確保が必要です。具体的に主張されたいと思われる方は弁護士に依頼・相談することをお勧めします。

さらに、寄与分及び特別寄与料を主張する場合は、家庭裁判所に申立てが必要です。寄与分については、「相続開始から10年間」の期間制限があります。特別寄与料については、申立てができる期間が「特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から6か月」及び「相続開始の時から1年」以内という短い期間制限(改正民法第1050条第2項ただし書)になりますので、ご注意ください。

では、他に「寄与分」や「特別寄与料」という考え方を反映させて、介護をしてくれた人に感謝の気持ちとして残しておく方法はないでしょうか。その方法としては、遺言書の作成があります。

遺言書では、ご自分の財産をどのように相続させるのか、お世話になった人への感謝の気持ちを込めて作成することができます。しかも、ご自分が納得されるまで何度も書き直すことができるのがポイントです。遺言書では、貢献してくれた人に感謝の気持ちとともに、財産の宛先をご自分で決めておくことができます。こうしておけば、亡くなられた後、ご家族が遺産分割協議で寄与分をめぐり揉めるというリスクが回避・軽減できます。

なお、当センターでは、作成及び内容の確実性から、公正証書遺言をお勧めいたします。

何から始めたら良いのか、相続や遺言について検討されたいと思われる方は、ご相談ください。ご相談は無料です。

ワンストップ相続のルーツ

代表 伊積 研二

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