4月号「相続土地国庫帰属制度」について
2023.04.03
「相続土地国庫帰属制度」とは、2021年4月成立した制度(※)で、相続又は遺贈により土地の所有権を取得した者がその土地の所有権を国庫に帰属させることについての承認を求めることができる制度をいいます。この制度の背景には、土地を相続したものの、土地を利用する予定がないので手放したいと考える方が増えていること、土地を望まず取得した所有者の負担感が増しており、土地が適切に管理されないまま放置され、将来いわゆる「所有者不明土地」につながるおそれがあることなどが問題になっていました。そこで、このたび一定の要件の下、相続等により取得した土地を手放して国庫に帰属させることが可能になりました。この制度は、令和5年4月27日に施行されます。
この制度により、将来的に土地所有者の不明化や管理不全化を予防することが期待されています。
(※)相続等により取得した土地所有権の国庫の帰属に関する法律/相続等により取得した土地所有権の国庫の帰属に関する法律施行規則
国庫に帰属した土地は、普通財産として、国が管理・処分されます。主に、農地用として利用されている土地、主に森林として利用されている土地については、農林水産大臣が、それ以外の土地は財務大臣が管理・処分することになります。
手続の流れの概要は以下のとおりです。
①相続又は遺贈(相続人に対する遺贈に限る)により土地を取得した者です。共有地の場合は共有者全員で申請する必要があります。
②法務大臣(法務局)による要件審査・承認があります。
→管理コストの国への転嫁や土地の管理をおろそかにするモラルハザードが発生する恐れを考慮して、審査を実施。
❶土地の要件…通常の管理又は処分をするに当たり過分の費用又は労力を要する土地は不可。
❷負担金等…土地の性質に応じた標準的な管理費用を考慮して算出した10年分の土地管理費相当額の負担金の納付が必要。
③申請者が10年分の土地管理費相当額の負担金を納付します。
→負担金算定の具体例としては、
・宅地は面積にかかわらず20万円、ただし一部の市街地の宅地については面積に応じ算定します。
・田、畑については、面積にかかわらず20万円、ただし一部の市街地、農用地区域等の田、畑については、面積に応じ算定。
・森林については、面積に応じ算定。
・その他(雑種地、原野等)については、面積にかかわらず20万円。
④申請した土地が国庫に帰属します。国庫に帰属した土地は、普通財産として、国が管理・処分することになります。
このように、相続した土地について、一定の条件の下、国が引き取る制度がスタートします。
この制度により「所有者不明土地」がなくなることが期待されます。
ワンストップ相続のルーツ
代表 伊積 研二