相続ニュース

このコーナーでは、相続に関する情報をお届けします(毎月1日更新)

9月号「生前贈与加算の改正について」

2023.09.01ニュース

高齢世代から若年世代への資産移転を促進する観点から、「生前」または「相続時」と選択する資産移転の時期に関わらず、税負担が一定となる税制を構築するため、令和5年度税制改正により、相続税の計算上、相続財産に加算される生前贈与の期間が、3年から7年に延長されました。

▼弊社相続ニュース2023年2月号「相続開始前に贈与があった場合の相続税の課税価格への加算期間等の見直し」抜粋

「現行制度では、相続または遺贈により財産を取得した者が、その相続の開始前3年以内にその相続に係る被相続人から贈与により財産を取得したことがある場合には、その贈与により取得した財産の価額が相続税の課税価格に加算されますが、この暦年課税における相続前贈与の加算期間を7年に延長されます。なお、延長した期間(4年間)に受けた贈与のうち一定額(100万円)については、相続財産に加算しないこととする見直しが行われます。」とご案内しておりました。

つまり、延長した期間(3年超7年以内)の贈与財産は、4年間の合計額のうち100万円を超えた部分が相続税課税価格への加算対象となります。

なお、この改正は、令和6年1月1日以後に贈与により取得する財産に係る相続税に適用され、令和9年1月以後の相続からこの改正の影響を受けることになります。

例えば、令和13年1月1日以降に相続が開始した場合、生前贈与の加算期間は7年となります。つまり、3年超7年以内の贈与期間は令和6年1月1日から令和9年12月31日までとなり、この期間に受けた贈与財産は100万円まで控除することができ、100万円を超えた部分が相続税課税価格への加算対象となります。

言葉で説明するとややこしくなりますが、大切なことは、目的に沿って適切に贈与を行うということではないでしょうか。節税対策でよく活用される暦年贈与ですが、何のために財産を移転させるのか、という部分を忘れずに、それぞれの制度の特徴を踏まえて、ご意向に沿ったプランを計画的に実行されるのが得策だと思います。

贈与については、時間を味方にすることがポイントになります。大切な財産を大切なご家族に移すためにも、全体的な視点から捉え、有効的に制度を活用されることをお勧めいたします。

相続を含めた贈与の問題について、お元気なうちに取り組まれていたらと思うケースが多いのが現状です。弊社は、相続や事業承継全般のお悩みについて親身に対応いたします。先ずはお気軽にご相談ください。

ワンストップ相続のルーツ

代表 伊積 研二

8月号「おひとりさま」の相続

2023.08.01ニュース

近年、「おひとりさま」という言葉を良く耳にします。2020年の国勢調査の結果(2021年11月末政府公表)では、単身(シングル)世帯の割合が38.1%となり、この割合は上昇の一途をたどっています。高齢化が進むなか、配偶者やパートナーとの死別や離別で単身(シングル)となる人は多く、さらに若いうちから単身(シングル)で生きる「おひとりさま」を選択する人が増えてきています。

「おひとりさま」という生き方も一つの生き方だと思います。しかし、「おひとりさま」が亡くなられた場合の手続きや相続手続の準備を何もしていなかった場合に問題が発生します。

この相続ニュースでも、たびたび相続の備えが大切であること、遺言の作成が有効であることをご紹介してきました。「おひとりさま」の場合には、相続人がいないケースが多く、相続人がいる場合でも兄弟姉妹が相続人になり、相続人の人数が多くなるため合意形成が難しくなるケースも多いようです。

一番大変なのは、生涯独身で配偶者や子どもがおらず、両親も既に他界、兄弟姉妹もいない場合の「おひとりさま」です。例えば、病院に入院して手術をする場合には、病院から保証人を求められますし、生死にかかわる入院時には、延命治療を受けるかどうかの意思確認が取れないというような問題もあります。そして、「おひとりさま」が亡くなられた場合、病院や施設利用料の支払い、お葬儀(火葬のみの場合でも)費用の支払いなど、亡くなられた直後にもまとまった支払いが必要になります。さらに、相続財産を清算するために、相続財産清算人を申し立てたりしなければ、財産を動かすことすら出来なくなるため、債務の支払い、例えば家賃や生活関連費用の支払いに関して困った状況になります。

最高裁判所の調べによると、相続人不存在で国庫に入った財産額が、2021年度は過去最高の約647億円を記録したそうです(2020年度は約600億円)。この額は10年前のおよそ2倍に相当します。今後も、高齢の「おひとりさま」が増加するにつれて、国庫に帰属する遺産額はさらに増大するのではないかと考えられています。

このような困った状況にならないためにも、「おひとりさま」として生きる選択をされた方は、特に、ご自分がもしものときにどうして欲しいのか、お金の支払いに関することも含めて準備されておく必要があります。このことは「おひとりさま」に限ったことではありませんが、「おひとりさま」の相続対策は大変重要です。

8月は各地でお盆を迎える季節です。故人を偲びながら、自分のもしものときのことを考えてみてはいかがですか。現在の財産状況の整理を踏まえて、今後どのように生きたいのか、もしもの場合には誰に手続きをお願いしておくのかなど具体的に検討し、準備しておきましょう。

何をどのようにすればいいかわからない方は、当センターまでお気軽にご相談ください。

ワンストップ相続のルーツ

代表 伊積 研二

7月号「円満で幸せな相続に必要なこと」

2023.07.01ニュース

円満で幸せな相続を迎えるためには、どのような準備をすれば良いでしょうか。

まず、被相続人となられる方が、「お元気なうちに」相続について検討することが必要です。先月号でもお伝えしたように、万一のことが起こった際に一番困るのは、残された相続人ではないでしょうか。

「具体的に、何歳から準備すれば良いでしょうか」というご質問をいただくことがありますが、私共は「思い立ったが吉日です。準備は早い方が安心です。」とお伝えしております。なぜなら、その方がいつ万一のときを迎えるのか、病気や認知症などで判断能力が減退するのかが分からないからです。

遺されたご家族を一番悩ませることは、遺産をどのように分割するかという遺産分割協議の場面で多く起こります。遺産分割の内容次第では、これまで家族関係が良好だった方でもトラブルになるからです。また、今般の民法改正(令和5年4月1日施行)にて、遺産分割協議において特別受益と寄与分の主張をする場合の期限を設け、「相続開始の時から10年」と規定されました(改正民法904条の3)。特別受益と寄与分は、いずれも相続人間の公平を図る制度ですが、相続開始の時から10年を経過するとこれらの主張ができなくなるので注意が必要です。10年あるので大丈夫、とお考えの方もいらっしゃると思いますが、相続人間で遺産分割協議がまとまらず、遺産分割の調停・審判になった場合、遺産分割で家族関係がこじれてしまい、合意形成も難しくなります。さらに、遺産分割協議中に、相続人に相続が発生し、当事者関係が複雑化する場合はますます合意形成が難しくなり、長期化する可能性が高まります。

では、このような困った事態を防ぐためには、どうすれば良いでしょうか。やはり、被相続人にあたる方が、ご自分で大切な財産を誰にどのように遺すかについて、お元気なうちから取り掛かり、準備しておくことが大切です。

「うちは相続財産といっても自宅と預貯金だけだから大丈夫」「兄弟の仲は良いから大丈夫」という方も多く見受けられますが、特に相続財産に占める自宅の財産価値の割合が高く預貯金が少ない場合には、相続人間の財産のバランスをとるのが大変なので注意が必要です。また、不動産を共有で分ける場合にはその後の処分等の合意形成が難しくなるので原則としてお勧めできません。分け方次第ではいわゆる「争族(そうぞく)」に発展しうるので、バランスをとるなどの工夫も必要です。

さらに、財産をどのように分けるかを検討される際には、相続税の問題や納税資金対策の問題も併せて検討されることをお勧めいたします。

なお、ご自分の大切な財産を誰にどのように遺すかについては、やはり遺言書の作成が有効です。また、自筆証書遺言は民法の方式に従って作成する必要がありますので、注意が必要です。当センターでは、遺言は公正証書遺言をお勧めしております。 何をどのようにすれば“円満で幸せな相続”を迎えられるかというヒントについては、ぜひ当センターまで気軽ご相談ください。相談は無料です。

ワンストップ相続のルーツ

代表 伊積 研二

6月号「遺言とエンディングノート」

2023.06.01ニュース

いわゆる「終活」という言葉はいつから注目されるようになったのでしょうか。今から約10年前、2012年の流行語大賞に、終焉を考える活動という「終活」という言葉がノミネートされ、その頃から「エンディングノート」も一般に知られるようになってきました。現在では、書店でも多くのエンディングノートが販売されています。

遺言とエンディングノートには、違いがあることをご理解いただいているでしょうか。遺言とは、民法という法律に定める方式に従うことで、法律上の効力を有するものです。主に、ご自分で書く自筆証書遺言や公証人と作成する公正証書遺言が挙げられます。他方、エンディングノートには特に決められた方式も法律もなく、遺書(一般に、死後に残された人に宛てた手紙)とも異なり、本人が人生の終わり方まで記入するものとされており、何ら法的効力がないものです。何でも自由に書けるので、人生の振り返り(自分史や履歴、重要な出来事など)、万一のことが起こった際に連絡して欲しい人の連絡先や葬儀方法の希望など、自分の要望についても記しておくことができます。

また、エンディングノートは遺言の付言事項(ふげんじこう。補足、法的な効力はない。)のような形で活用することができます。例えば、公正証書遺言の場合、付言事項として遺言者本人がどうしてこのような遺言を作成するのかという思いを伝えることができますが、作成時に長々と思いを書き連ねることは稀で、簡潔に書き記されるのが通常です。しかし、遺言の付言だけでは、家族への感謝の気持ちを伝えるのには不十分である場合もあります。そこで、遺言に添えてお手紙を書くか、エンディングノートを作成し、家族への感謝の思いなどについて書いておくのも一つの方法だと思います。

さらに、エンディングノートの作成は、これまでの自分の棚卸し(財産・人間関係なども含む)という性質もありますので、遺言適齢期ではない比較的若い方も作成しやすいものだと思います。「遺言を作成するのはまだちょっと早いから…」と思われる方も、エンディングノート作成に取り掛かることで頭の中が整理され、遺言作成のきっかけにもつながると思います。

まだ遺言を作成するのは早いと思われている方も、まずはエンディングノートの作成に取り組んでみられてはいかがでしょうか。また、いつ万一のことが起こるかわからないので、遺影のご準備も併せてされておくのもお勧めいたします。

しかしながら、やはりエンディングノートには法的効力がありませんので、ご自分の大切な財産を誰にどのように遺すかについては、やはり遺言の作成が必要です。また、遺言は民法の方式に従って作成する必要がありますので、お元気なうちに作成されることをお勧めいたします。

何をどのようにすれば“幸せな相続”を迎えられるかというヒントについては、ぜひ当センターまで気軽にご相談ください。相談は無料です。

ワンストップ相続のルーツ

代表 伊積 研二

5月号「令和5年度税制改正」

2023.05.01ニュース

令和5年度税制改正に関する「所得税法等の一部を改正する法律案」が令和5年3月28日に国会で可決・成立しました。これにより、資産移転の時期の選択により中立的な税制の構築等がなされます(改正法のもとになる「令和5年度税制改正大綱」の一部ご紹介ついては、2023年2月号相続ニュース参照)。

そもそも、今回の改正の背景には、①贈与税は相続税の累進回避を防止する観点から、相続税よりも高い税率構造になっていること、②実際、相続税がかからない方や相続税がかかる方であってもその多くの方にとっては、相続税の税率よりも贈与税の税率の方が高いため、若年層への資産移転が進みにくくなっていること、③他方、相続税がかかる方の中でも相続財産の多いごく一部の方にとっては、相続税の税率よりも贈与税の税率の方が低いため、財産を分割して贈与する場合、相続税よりも低い税率が適用されることから、生前贈与でも相続でもニーズに即した資産移転が行われるよう、相続・贈与に係る税負担を一定にするため、資産移転の時期の選択により中立的な税制を構築する必要がありました。

相続に関連する改正のポイントとしては、大きく3つあります。

1つ目は、相続時精算課税制度について、暦年贈与の基礎控除とは別途、110万円の基礎控除を創設するとともに、相続時精算課税で贈与を受けた土地・建物が災害により一定の被害を受けが場合に相続時にその課税価格を再計算する見直しがなされます。なお、令和6年1月1日以後に受けた贈与について適用されます。

2つ目は、暦年課税において贈与を受けた財産を相続財産に加算する時期を相続開始前3年間から7年間に延長し、延長した4年間に受けた贈与のうち総額100万円までは相続財産に加算しない見直しがなされます。なお、令和6年1月1日以後に受けた贈与について適用されます。

3つ目は、教育資金の一括贈与にかかる贈与税の非課税措置について、節税的な利用につながらないよう所要の見直しを行った上で、適用期限を3年延長します。

結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置について、節税的な利用につながらないよう所定の見直しを行った上で、適用期限を2年延長します。

【財務省資料「令和5年度税制改正」一部抜粋(令和5年3月発行)】

皆さんが気になられているのは、主に相続時精算課税制度による贈与と、暦年課税による贈与に関する改正点ではないでしょうか。これらの改正は来年1月1日の贈与から適用されますので、贈与による資産移転を検討されている方は特にご注意ください。

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代表 伊積 研二

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