相続ニュース

このコーナーでは、相続に関する情報をお届けします(毎月1日更新)

5月号「遺産分割等に関する民法改正①」

2020.05.01ニュース

2018年になされた民法の相続編の改正は、遺言書の保管制度を除き既に施行されています。今回の相続ニュースでは、遺産分割等に関する民法改正①として、遺産分割前の預貯金の払戻し制度についてご紹介します。

これまで、被相続人死亡後、実務上銀行口座が凍結されて預貯金をすぐに引き出すことが難しかったことや、最高裁が預貯金についても遺産分割の対象となる旨を明示したため(最高裁平成28年12月19日決定)、遺産分割前に預貯金の払戻しを受けることができなくなる可能性が高まっていました。

しかし、他方で、相続人が生前、被相続人の預貯金のみで生計を立てていた場合や、葬儀費用を立て替えたりしなければならない場合などに事実上の不都合がありました。

そこで、改正民法では、「各共同相続人は、遺産に属する預貯金債権のうち相続開始の時の債権額の3分の1」に法定相続分等を乗じた額については、「単独でその権利を行使できる」(新民法909条の2)としました。これは、標準的な当面の必要生計費、平均的な葬式の費用の額などに充てるため、遺産分割前の預貯金の一部の払戻しを認めるものです。各相続人は、口座ごと(定期預金の場合は明細ごと)に、金融機関から単独で払戻しを受けることができます。これまでの事実上の不都合を緩和する措置を講じました。

この払戻しは、施行令により、金融機関ごとに150万円が上限とされました。したがって、預貯金が複数の金融機関に分散している場合の方が、より多くの払戻しを受けることができることになります。

これにより、例えば、Aが死亡し(遺言書なし)、妻Bと子Cが相続人、Aが甲銀行に900万円、乙銀行に300万円の預貯金を預けていた場合、Bは、Aの葬儀費や生活費として、甲銀行から150万円(900万円×1/3×1/2=150万円)、乙銀行から50万円(300万円×1/3×1/2=50万円)、合計200万円の払戻しを受けることができます。

制度利用の際に必要な書類は、概ね、本人確認書類の他、被相続人の除籍謄本、戸籍謄本または全部事項証明書(出生から死亡まで連続したもの)、相続人全員の戸籍謄本または全部事項証明書、預金の払戻しを希望する方の印鑑証明書が必要です。ただし、各金融機関により必要書類が異なる場合がありますので、事前に金融機関にお問い合わせください。

なお、今回ご紹介した、遺産分割前の預貯金の払戻し制度は、令和元年7月1日に施行されていますが、相続開始が令和元年7月1日より前であっても、払い戻し請求が令和元年7月1日以降である場合には、新法が適用されます。

また、遺産分割時には払戻し済みの預貯金については、一部分割がされたものとして扱う点を忘れないようご注意ください。

                                   ワンストップ相続のルーツ

                                   代表  伊積 研二        

4月号「所有者不明土地等に係る課税上の課題への対応」

2020.04.01ニュース

令和元年12月20日、「令和2年度税制改正大綱」が閣議決定されました。 今回は、「令和2年度税制改正大綱」の中から、登記簿上の土地や家屋の所有者に課される固定資産税に関する、「所有者不明土地等に係る課税上の課題への対応」(大綱33頁)について簡潔にご紹介します。

固定資産税は登記簿上の土地や家屋の所有者に課されます。所有者が亡くなり、相続登記がなされないままの状態が続くと、新たな納税義務者を特定出来ず、その土地等に居住したり営業したりする者に対して課税が出来ないのが現状です。

しかし、高齢化社会において相続が増加することにより、所有者不明の土地が今後増加することが予想されます。また、所有者の調査に多大な時間と労力が費やされることや、固定資産税を払わないままに土地を使用する者に対する不公平を是正する必要があります。 そこで、今回この課税上の課題への対応がなされました。内容は次のとおりです。

1)現に所有している者の申告の制度化

市町村長は、土地または家屋について登記簿等に所有者として登記等がされている個人が死亡している場合、当該土地又は家屋を現に所有している者(以下、「現所有者」)に対し、当該市町村の条例で定めることにより、当該現所有者の氏名、住所その他固定資産税の賦課徴収に必要な事項を申告させることができるようになります。また、固定資産税における他の申告制度と同様の罰則が課されます。

この改正は、令和2年4月1日以後の条例の施行の日以後に現所有者であることを知った者について適用されます。

(2)使用者を所有者とみなす制度の拡大

市町村長は、一定の調査を尽くしてもなお固定資産の所有者が一人も明らかとならない場合、その使用者を所有者とみなして固定資産課税台帳に登録し、その者に固定資産税を課すことができるようになります。

これにより使用者を所有者とみなして固定資産課税台帳に登録しようとする場合には、その旨を当該使用者に通知するものとされます。

この改正は、令和3年度以後の年度分の固定資産税について適されます。

このように、今回の改正は、長年相続登記がなされないままの土地建物を増加させないための措置ともいえます。

このような事態を避けるためにも、財産を遺す人は遺言等できちんと遺産の行く先を指定しておくこと、相続人等は相続後すみやかに登記をすることがこれまで以上に大切です。特に財産を残す人は、きちんと生前に財産関係を明らかにしておくことが肝要です。

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                                                                代表 伊積 研二

3月号 「配偶者居住権等に係る譲渡所得の取扱い」

2020.03.02ニュース

前回2月号の相続ニュースでは、今年4月1日以降の相続から適用される「配偶者の居住の権利」の内容についてご紹介しました。

そこで、今回は、配偶者居住権等に係る譲渡所得の取扱いについて簡潔にご紹介します。

◆配偶者居住権とは?

配偶者居住権とは、被相続人の配偶者(以下単に「配偶者」といいます。)が、被相続人の財産に属した建物に相続開始時に居住していた場合、その居住建物の全部について原則として配偶者が無償で居住収益できるとする法定の権利をいいます(民法1028条1項、1030条)。

この配偶者居住権の新設により、配偶者が安心して住み慣れた家で居住できるようになりました。しかも、配偶者居住権は、基本的には所有権よりも評価額が低く評価されるため、最終的には預貯金などの財産もより多く相続できるようになります。

要件については、2月号の相続ニュースを参照ください。

このように、配偶者居住権は、配偶者の終の棲家の確保、配偶者の保護を目的として創設された権利ですので、原則として配偶者の終身の間存続します。 しかし、現実には、遺された配偶者が老人ホームなどに入所することになり、被相続人が遺した建物を譲渡するケースも想定されます。 その場合配偶者居住権等に係る譲渡所得の取扱いは以下のとおりです。

◆配偶者居住権の所有者が配偶者居住権等の消滅によって取得した場合

配偶者居住権(配偶者居住権または配偶者敷地利用権)が合意による解除や放棄により消滅し、これにより配偶者が対価を取得した場合には、譲渡所得として課税対象になります。また、その際の取得費については、居住建物等の取得費に配偶者居住権等割合を乗じた金額から、配偶者居住権等設定から消滅等までの期間に係る減価の額を控除した金額となります。

◆配偶者居住権等の消滅前に居住建物等を譲渡して取得した場合

相続により居住建物等を取得した相続人が、配偶者居住権等の消滅前にその居住建物等を譲渡した場合は、その対価が譲渡所得の対象となります。その際の取得費は、居住建物等の取得費から配偶者居住権または配偶者敷地利用権の取得費を控除した金額となります。

配偶者居住権の制度も上手に活用して、必要に応じて売却する際の取扱いも踏まえて、円満で満足のいく“幸せな相続”を迎えて頂きたいと思います。

ワンストップ相続のルーツ

                  代表 伊積 研二

2月号 「配偶者の居住の権利」

2020.02.01ニュース

今年は、平成29年度に成立した配偶者居住権や法務局での自筆証書遺言の保管制度など、相続関係の改正民法の一部が施行されます。配偶者居住権は、今年4月1日以降の相続から適用されます。

今回は、被相続人の配偶者の権利として新たに制定された、「配偶者居住権」(民法1028条1項)と「配偶者短期居住権」(民法1037条)についてご紹介します。

◆配偶者居住権(民法1028条1項)

配偶者居住権とは、被相続人の配偶者(以下単に「配偶者」といいます。)が、被相続人の財産に属した建物に相続開始時に居住していた場合、その居住建物の全部について原則として配偶者が無償で居住収益できるとする法定の権利をいいます(民法1028条1項、1030条)。

この配偶者居住権の新設により、配偶者が安心して住み慣れた家で居住できるようになりました。しかも、配偶者居住権は、基本的には所有権よりも評価額が低く評価されるため、最終的には預貯金などの財産もより多く相続できるようになります。

配偶者が配偶者居住権を取得できる場合は次のとおりです。

①遺産の分割によって配偶者居住権を取得するものとされたとき(民法1028条1項1号)

②配偶者居住権が遺贈の目的とされたとき(民法1028条1項2号)

③以下の場合に遺産分割の請求を受けた家庭裁判所が配偶者居住権を取得する旨を定めたとき(民法1029条)

・共同相続人の間で配偶者が配偶者居住権を取得することについて合意が成立しているとき(民法1029条1号)

・配偶者が家庭裁判所に対して配偶者居住権の取得を希望する旨を申し出た場合において、居住建物の所有者の受ける不利益の程度を考慮してもなお配偶者の生活を維持するために特に必要があると認められるとき(民法1029条2号)

※納得していない他の相続人がいる場合であっても、③によると配偶者が配偶者居住権を取得できる場合があることになります。

ただし、以下の場合には配偶者居住権は成立しません。

被相続人が相続開始の時に居住建物を配偶者以外の者と共有していた場合には、配偶者居住権は成立しません(民法1028条1項柱書ただし書)。配偶者居住権は無償、つまり対価(賃料等)なしに成立するため、共有者にこの負担を負わせることはできないとされています。

なお、配偶者居住権は、原則として配偶者の終身の間存続する権利ですので、登記ができ、登記が対抗要件となります(民法1031条)。

◆配偶者短期居住権(民法1037条)

配偶者短期居住権とは、配偶者が被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に無償で居住していた場合に、その居住建物の所有権を相続または遺贈により取得した者に対し、居住建物を最低6か月間無償で使用できる権利をいいます(民法1037条)。つまり、遺産分割で居住建物の帰属が確定するまで等の場合に成立する、配偶者の短期的な住まいの確保のための権利なので、終身の配偶者居住権と比較して「短期」の居住権とされています。配偶者が居住建物の一部のみを無償で使用していた場合には、その一部を無償で使用できることになります。

この配偶者短期居住権の新設により、配偶者は、相続開始の時から少なくとも6か月の間は居住権を主張できるため、この期間は住まいの確保をすることができます。

ただし、以下のいずれかの場合には配偶者短期居住権は成立しません(民法1037条1項柱書ただし書)。

①配偶者が欠格者であるとき

②配偶者が被廃除者であるとき

③配偶者が相続開始の時に配偶者居住権を取得したとき

配偶者短期居住権の存続期間は次のとおりです。

①居住建物について配偶者を含む共同相続人間で遺産の分割をすべき場合

  →遺産の分割により居住建物の帰属が確定した日又は相続開始の時から6か月 を経過する日のいずれか遅い日(民法1037条1項1号)

②上記①の場合以外の場合

  →居住建物の取得者が配偶者短期居住権の消滅を申入れした日から6か月を経過した日(民法1037条1項2号)

なお、配偶者短期居住権は、短期間の暫定的な権利ですので登記できません。

このように、高齢化社会を踏まえた相続法の改正がなされています。この新しい制度も上手に活用して、円満で満足のいく“幸せな相続”を迎えて頂きたいと思います。

                                     ワンストップ相続のルーツ

                                          代表 伊積 研二

令和2年(2020年) 年頭のご挨拶

2020.01.06ニュース

新年明けましておめでとうございます

皆様よいお年をお迎えのこととお慶び申し上げます

さて、今年はどのような年になるでしょうか。

“子年”は、十二支の新しい運気のサイクルが始まる年です。植物に例えると成長に向って種子が膨らみ始める時期で未来へ大いなる可能性を感じさせる年になりそうです。

今年、おかげさまで弊社は設立15周年を迎えますが、これを節目に事業内容をこれまでどおり相続コンサルティングは主軸にするとしても、事業承継コンサルティングにも力を入れていく方針です。

現在、日本の中小企業における事業承継の現状は、2019年版中小企業白書よると、休廃業及び解散件数は約4万7千件にものぼり増加傾向にあります。日本経済を支える中小企業の雇用や技術の損失、さらに、地域経済の衰退へと繋がっており、大きな社会問題になっています。

また、中小企業の最も多い経営者の年齢は69歳になっており、1995年では47歳であったのが、この23年間に経営者の高齢化が大きく進展しています。 これは中小企業の後継者難が増加していること、平均寿命の上昇、事業承継対策への取り組み時期の遅れなどにより、経営者の在任期間が長期化していることが要因となっています。

それから、中小企業の事業承継の方法は、親族内承継(配偶者、子、孫、兄弟姉妹)から親族外承継(役員、従業員、M&A)に大きく変わってきました。 かつては、親族内承継は全体の約90%を占めていたものが、約55%までに減少しており、その代わりに親族外承継が約35%と増加しています。

親族内承継の場合、後継者が決定して実際に引継ぐまでの期間は、約52%が1年以上、内、約24%が3年以上掛かっています。実際には、後継者が決まるまでの期間や引継ぎ後の並走期間もあり、5年以上は掛かります。 一方、親族外承継(M&A)の場合は、約30%が1年以上掛かっていますが、約70%は1年未満の引き継ぎ期間で済んでいます。どちらの方法を選択するにしても、先ず、早い段階で事業承継対策を始めることが重要です。

弊社は、このような状況を踏まえて、対象となる中小企業に事業承継コンサルティング業務を提供し、その企業の存続と繁栄に貢献し、更には社会に貢献することを目的として業務に力を入れてまいります。

今年も、弊社のクライアントとなられた個人や法人の皆様に対して、個々のニーズにマッチした質の高いサービスを提供し、この会社に任せて本当に良かったと思って頂けるように邁進していきたいと考えております。 最後になりましたが、今年一年の皆様のご健康とご多幸をお祈りし、年頭のご挨拶といたします。

  令和2年(2020年)元旦

                           株式会社日本相続センター

ワンストップ相続のルーツ

代表 伊積 研二

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